なぜカスハラはなくならないのか?現場で起きている3つの構造的問題

介護・医療業界のカスハラ対策シリーズ ① 課題編

「また同じ利用者に怒鳴られた」「何時間も対応していたのに、上の人を呼べと言われた」
——介護・医療の現場では、こんな声が毎日のように上がっています。
スタッフが懸命に対応しても、カスタマーハラスメント(カスハラ)はなかなかなくなりません。それはスタッフが未熟だからでも、施設の対応が悪いからでもありません。
カスハラが起き続けるのには、現場に深く根ざした「構造的な理由」があるのです。

目次

現場が感じる「防ぎきれない」という感覚

研修を受けても、マニュアルを整備しても、「また起きてしまった」という経験はどの施設でも繰り返されます。
その背景には、個人の努力だけでは解決できない3つの構造的な問題が絡み合っています。

現場の声(介護福祉士・40代)
「利用者さんのご家族から毎週のように長時間クレームのお電話が。丁寧に対応しているつもりなのに、どんどん要求がエスカレートして…。何が正解なのか、もう分からなくなってしまいました」

構造的問題 その1:「断れない」という心理的拘束

1. 感情的依存関係と断れない文化

介護・医療現場では、スタッフと利用者・患者の間に強い信頼関係が生まれます。それ自体は大切なことです。
しかし裏を返せば、「この人の要求を断ったら関係が壊れるのでは」「クレームになったら施設の評判が落ちるのでは」という恐怖感が、過度な我慢につながりやすい土壌をつくっています。
加えて、「サービス業は我慢が当たり前」という独自の文化的な思い込みが、ハラスメントを”仕方ないこと”として受け入れさせてしまいます。スタッフは限界を感じていても、声を上げにくい状況に置かれているのです。

問題の構造
「信頼関係を守りたい」という善意が、不当な要求を断れない心理的拘束に変わる。
個人の対応力では解決できない、現場全体が抱える課題です。

構造的問題 その2:「エスカレート」を止める仕組みがない

2. 対応の属人化とエスカレーションの不在

カスハラは最初から激しいケースばかりではありません。
最初は小さな不満だったものが、「丁寧に謝り続けるうちにどんどん要求が大きくなった」というパターンがほとんどです。
しかし多くの現場では、どの段階で上司に引き継ぐか、どう対応記録を残すか、組織としてのルールが曖昧なまま放置されています。対応が特定のベテランスタッフに集中し、「あの人に頼めば何とかなる」という属人化が進むことで、問題が表面化しにくくなっています。

よくあるケース
クレームを受けたスタッフが一人で抱え込み、記録もなく対応。数週間後、同じ相手から別のスタッフへ同様の要求が繰り返される——という悪循環が生まれます。

問題の構造
「今回だけ」の対応が積み重なり、施設全体としての判断基準が育たない。組織の記憶が蓄積されないため、同じ問題が繰り返される。

構造的問題 その3:「証拠」がなければ動けない

3. 記録・証拠の欠如による対応の限界

「そんなことは言っていない」「あなたたちの対応が悪かった」——
カスハラが深刻化したとき、施設側が組織として毅然とした対応を取ろうとしても、記録がなければ事実の確認すらできません。電話での口頭クレーム、訪問時の言い争い。こうした場面の多くが記録されないまま終わっています。
記録がないということは、問題の深刻さを上層部が把握できないということでもあります。「まだ現場で対応できているだろう」という認識のまま、スタッフが一人で限界まで抱え込んでしまうのです。

問題の構造
記録の不備が「見えない問題」を生み出す。事実が不透明なまま対応が続き、スタッフの疲弊だけが積み重なっていく。

課題から対策へ

「断れない」「止められない」「記録できない」——
この3つの問題は、個人の努力では解決できません。
しかし、仕組みと体制を整えることで、確実に変えていける課題でもあります。次回は、これらの構造的問題を”防げる構造”に変えるための具体的な対策をお伝えします。

カスハラ対策はスタッフを守るためだけでなく、利用者・患者への質の高いケアを維持するためにも欠かせない経営課題です。
次回の②対策編では、組織として今日から始められる実践的なアプローチをご紹介します。

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