なぜカスハラはなくならないのか?警備・イベント現場に潜む3つの構造問題

【警備・イベント業界×カスハラ対策】コラム①

「また今日もクレームか……」
警備スタッフやイベント現場のスタッフなら、一度はそう感じたことがあるのではないでしょうか。
近年、「カスタマーハラスメント(カスハラ)」という言葉がメディアでも取り上げられるようになり、社会全体での認知は広まりつつあります。しかし現場では、依然として理不尽なクレーム・暴言・脅迫的言動が後を絶ちません。
「なぜカスハラはなくならないのか?」——その問いに答えるには、個人の問題や一時的なトラブルとして捉えるのではなく、業界・現場の「構造」に目を向ける必要があります。

本コラムでは、警備・イベント業界においてカスハラが慢性化しやすい背景に潜む「3つの構造問題」を解説します。
現場を守るための第一歩は、まず「なぜこうなるのか」を正しく知ることから始まります。

シリーズについて
本コラムは、カスハラ対策を業界別に掘り下げる連載シリーズの一環です。これまでに「小売業界編」「介護・医療業界編」を公開しており、今回の警備・イベント業界編で第3弾となります。業界ごとに異なる構造問題と対策を比較することで、より本質的なカスハラ対策のヒントが見えてきます。

目次

構造問題① 「お客様は神様」意識が生む過剰なクレーム文化

日本のサービス業には、長年にわたり「お客様を最優先に」という文化が根付いてきました。
高品質なおもてなしは日本の強みである一方、「要望は何でも叶えてもらえる」という誤った期待感を一部の利用者に植え付ける副作用を生んでいます。
警備・イベント現場ではとくに、スタッフが「サービス提供者」として認識されやすいため、来場者・利用者から強い要求を受けやすい立場にあります。入場規制・駐車場案内・誘導業務など、スタッフが「NO」と言わざるを得ない場面でも、利用者側は「融通を利かせてもらえて当然」と感じ、断られると不満・怒りに変わるケースが多くみられます。
さらに問題なのは、過去に強いクレームを言ったことで「要求が通った」という経験が、カスハラ行為を強化してしまうことです。現場が毅然とした対応をとれない文化がある限り、カスハラはなくなりません。

ポイント
「お客様第一主義」の文化がスタッフの毅然とした対応を妨げ、カスハラが容認される土壌をつくっています。
組織として「断る基準」「毅然とした対応方針」を明確にすることが重要です。

構造問題② スタッフの立場の弱さ——「言いやすい相手」として狙われる

カスハラが警備・イベント業界で特に深刻な背景のひとつに、「現場スタッフが言いやすい相手」と認識されやすい構造があります。
警備スタッフの多くは、委託先の企業から派遣された立場であり、主催者・施設管理者・元請け企業の間で板挟みになりやすい状況にあります。「クレームを上に報告すると業務に支障が出る」「契約に影響するかもしれない」という不安から、理不尽な要求を一人で受け止めてしまうケースも少なくありません。
また、イベント現場では非正規・アルバイトスタッフが多く、トラブル対応マニュアルが十分に整備されていなかったり、バックアップ体制が弱かったりすることもあります。「相談しても解決しない」「スタッフが孤立する」環境では、悪質なクレーマーにとって「何をしても大丈夫」と感じさせてしまいます。
さらに深刻なのは、こうした経験が積み重なることでスタッフの離職率が上がり、人材不足→属人的な対応→さらなるトラブル増加という悪循環が生まれることです。

ポイント
さらに深刻なのは、こうした経験が積み重なることでスタッフの離職率が上がり、人材不足→属人的な対応→さらなるトラブル増加という悪循環が生まれることです。

構造問題③ 「記録・証拠」がないまま泣き寝入りになる対応の限界

カスハラ対応において、現場が直面するもう一つの大きな壁が「記録・証拠の不足」です。
どれほど悪質なハラスメントであっても、記録がなければ「言った・言わない」の水掛け論になりがちです。警備・イベント現場では、大勢の来場者・騒音・現場の混雑などにより、スタッフが冷静に記録を取ることが難しい場面が多くあります。
また、仮に口頭で上司や会社に報告したとしても、記録が残っていなければ後の対応(警告・出入禁止・法的対処)が難しくなります。これが「被害を訴えても動いてもらえない」という現場スタッフの無力感につながり、カスハラが繰り返される温床になっています。
近年では、ウェアラブルカメラや通話録音ツール、デジタルレポートシステムなどを活用することで、この問題を解決しようとする企業も増えてきています。「証拠を残す仕組み」を整えることは、スタッフを守るだけでなく、クレーマーへの抑止力にもなります。

ポイント
「証拠がない」問題はテクノロジーで解決できます。記録を残す仕組みを導入することが、スタッフ保護と組織防衛の両面で有効です。

まとめ ——構造問題を知ることが対策の第一歩

本コラムでは、警備・イベント業界でカスハラがなくならない背景として、以下の3つの構造問題を取り上げました。

① 「お客様は神様」意識が生む過剰なクレーム文化断る基準・対応方針の明確化が必要
② スタッフの立場の弱さ=「言いやすい相手」として狙われる孤立させない体制・マニュアル整備が急務
③ 「記録・証拠」がないまま泣き寝入りになる対応の限界記録する仕組みがスタッフを守り抑止力になる

カスハラは「個人の問題」でも「たまたまのトラブル」でもありません。業界の構造そのものが抱えるリスクとして、組織全体で向き合う必要があります。
次回コラム「②対策編」では、こうした構造問題に対して企業・現場が実践できる具体的なカスハラ対策を詳しく解説します。

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