転倒事故の再発防止に必要なこととは? 医療・介護現場で考えたい記録と状況把握の重要性【後編】
【医療・介護現場向け】現場運営・安全管理

はじめに
前編では、梅雨時に高まりやすい転倒事故のリスクと、「なぜ事故が起きたのか分からないこと」が医療・介護現場の課題になっていることをお伝えしました。
転倒事故は、どれだけ対策を講じていても完全に防ぐことは難しいと言われています。
しかし、事故発生後の状況を適切に把握し、振り返りにつなげることで、同様の事故の再発リスクを下げられる可能性があります。
今回は、転倒事故の再発防止に向けた考え方と、現場の負担を増やさずに取り組める記録・状況把握の重要性について整理します。
転倒事故対策は「防ぐこと」だけではない
医療・介護現場では、転倒防止マットや手すりの設置、定期的な見守りなど、さまざまな対策が行われています。
事故を未然に防ぐための取り組みは、もちろん重要です。
一方で、事故が発生した際には「なぜ起きたのか」を把握することも同じくらい重要になります。
転倒した場所だけを見ていても、本当の原因は分からないことがあります。利用者の体調に変化があったのか、歩行補助具の使用状況に問題があったのか、周囲の環境に変化があったのか。
こうした背景を理解することで、初めて再発防止策を検討できるようになります。

再発防止には客観的な情報が欠かせない

転倒事故が発生すると、職員への聞き取りや事故報告書の作成が行われます。
しかし、事故の瞬間を見ていない場合や、複数の業務が重なっていた場合には、状況を正確に再現することが難しいケースもあります。
その結果、「おそらくこうだったのではないか」という推測に基づいた検討になってしまうことがあります。
もちろん現場の経験は重要ですが、再発防止策を考えるうえでは客観的な情報も必要です。状況を客観的に振り返ることができれば、事故の原因分析だけでなく、職員教育や運用改善にも役立てることができます。
ご家族への説明という観点も重要になっている
医療・介護現場では、事故発生後に利用者本人やご家族への説明が求められます。その際、どのような状況だったのか、施設としてどのように対応したのかを伝える必要があります。
しかし、状況が十分に把握できていない場合、説明そのものが難しくなります。
説明が不十分であることが、ご家族の不安や不信感につながることもあります。そのため、事故対応では再発防止だけでなく、状況を伝えられる状態にしておくという観点も重要になっています。

記録は職員を守るためにも必要
事故が発生した際、職員自身が精神的な負担を感じることも少なくありません。
「自分の対応に問題があったのではないか」と、一人で抱え込んでしまうケースもあります。
しかし実際には、職員が適切に対応していても事故が発生することはあります。だからこそ、状況を記録し、客観的に振り返ることが重要です。
記録は利用者やご家族のためだけでなく、現場で働く職員を守ることにもつながります。

現場の負担を増やさないことも重要な視点

一方で、記録の重要性が高まるほど、現場の負担も増えてしまいます。
事故報告書の作成、ヒヤリハット報告、申し送り資料など、医療・介護現場ではすでに多くの記録業務が存在しています。
そのため、「記録を増やす」のではなく、「振り返りに活用できる情報を残す」という考え方が求められます。
現場で無理なく運用できる仕組みでなければ、継続的な改善にはつながりません。
記録と状況把握を支援する仕組みという考え方
近年では、事故やトラブル発生時の状況確認を目的として、映像や音声を活用する施設も増えています。
例えば、職員が利用者対応を行う場面や、共用スペースでの状況を振り返ることで、事故発生前後の状況把握に役立てるケースがあります。
また、映像は事故原因の分析だけでなく、職員教育や業務改善、ご家族への説明の補助としても活用されています。
大切なのは、誰かを見張るためではなく、現場をより安全に運営するための情報を残すという考え方です。

医療・介護現場で求められるのは「振り返れる環境」

転倒事故を完全になくすことは簡単ではありません。
しかし、事故が起きたときに振り返ることができる環境を整えることは可能です。
なぜ起きたのか、どのような対応が行われていたのか、改善できる点はなかったか。
こうした振り返りの積み重ねが、事故の再発防止やサービス品質の向上につながっていきます。
まとめ
梅雨時は転倒事故のリスクが高まりやすい季節です。しかし、事故対策で本当に重要なのは、事故そのものを防ぐことだけではありません。事故発生後の状況を把握し、再発防止や状況の説明につなげることも、同じくらい大切な取り組みです。 そのためには、職員の経験や記憶だけに頼るのではなく、客観的に振り返ることができる環境づくりが求められます。現場の負担を増やさずに、より安全で安心できる医療・介護現場を目指すために、まずは現在の記録と状況把握のあり方を振り返ってみることから始めてみてください。
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記録だけでなく、教育や業務改善への活用も可能です。
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