誰が、いつ、入ったか分からない──介護・医療現場で増える内部リスクと管理課題
現場を守る内部リスク対策― 介護・医療現場の入退室管理シリーズ① ―
介護施設や医療機関では、利用者や患者の安全確保に加え、職員の働きやすさや内部の管理体制を整える必要性も高まっています。
一方で、人手不足や業務の多忙さから、日々の運用が優先され、鍵管理や入退室ルールの見直しが後回しになるケースも少なくありません。「共有鍵を誰が持っているか把握できていない」「夜間の出入り履歴が残っていない」「退職者や異動者の権限整理が曖昧なまま運用されている」──こうした声は、現場では珍しくありません。
このようなことはすぐに問題として表面化しなくても、トラブル発生時に原因の究明や説明対応がしにくくなる可能性があります。
この記事では、介護・医療現場で内部リスクへの関心が高まる背景や、入退室管理で起こりやすい課題について整理します。
介護・医療現場で内部リスクへの関心が高まる背景
介護・医療現場では、以前から外部侵入や盗難への対策が重視されてきました。しかし近年は、それだけでなく「内部リスク」への関心も高まっています。

内部リスクとは、必ずしも悪意ある不正行為だけを指すものではありません。
例えば、共有鍵の管理が曖昧で誰が出入りしたか把握できない状態、夜勤帯の出入り記録が残らない状態、薬品保管場所や重要エリアへのアクセス権限が整理されていない状態、退職者の権限停止が漏れてしまうケースなど、日常の運用の中に潜む課題も含まれます。
こうした状況は、事故やトラブル発生時の説明のしやすさにも影響します。特に介護・医療分野では、「何が起きたか」だけでなく、「なぜ起きたのか」「誰が関与したのか」を説明できる状態が求められる場面が増えています。
内部リスクは「不正」だけではない
内部リスクと聞くと、横領や情報漏えいなどをイメージする方もいるかもしれません。
しかし、介護・医療現場ではもっと日常的な課題が内部リスクにつながることがあります。
例えば、利用者の無断外出や徘徊、薬品や重要書類の管理エリアへのアクセス状況が把握できないケースなどが挙げられます。
さらに、人手不足の現場では、忙しさから共有鍵を使い回したり、引き継ぎが口頭だけになったり、誰が最後に対応したか記録が残らなかったりといった対応が、当たり前になってしまいがちです。
これらは現場を回すための工夫として始まっても、長期的には特定の人だけが把握している状態や、管理の抜け漏れにつながることがあります。
つまり、内部リスクは「誰かが悪い」のではなく、運用の積み重ねの中で生まれることも少なくないのです。

現場で起きやすい入退室管理の課題
介護・医療現場では、次のような課題が起こりやすい傾向があります。
鍵管理の属人化
「いつもの担当者が持っている」という状態になり、管理ルールが曖昧になります。担当者の変更や退職の際に、引き継ぎの抜け漏れが発生しやすくなります。

入退室の履歴が残らない

問題が起きた後に確認しようとしても、「誰が入ったのか分からない」「夜間対応時の状況が把握できない」といったケースがあります。
権限管理が整理されていない
本来は立ち入りを制限すべきエリアでも、多くの職員がアクセスできる状態になっている場合があります。
利便性を優先した結果、管理の範囲が曖昧になることがあります。

なぜ従来の鍵管理では限界があるのか
物理鍵はシンプルで導入しやすい一方、運用面では課題もあります。貸し借りの履歴が残りにくく、紛失時の対応負担も大きくなります。また、権限の変更が難しく、複数拠点での運営では管理がさらに複雑になりがちです。
日常の運用では問題なく見えても、事故やトラブルが発生した際に「記録がない」ことが課題になる場合があります。そのため近年は、「鍵があるかどうか」だけでなく、誰が・いつ・どこへアクセスしたかを把握できるかどうかが重視されるようになっています。
内部の管理体制と安全確保を両立するには
介護・医療現場では、安全性を高めたい一方で、現場の負担を増やしすぎる運用は現実的ではありません。大切なのは、管理を厳しくすることではなく、現場の負担を増やさずに、状況を把握しやすい仕組みやルールを少しずつ整えていくことです。
- アクセス権限を見直す
- 出入りの履歴を把握できる仕組みを整える
- 共有鍵の運用ルールを整理する
- 定期的に運用ルールを確認する
こうした小さな見直しも、管理体制の強化や説明のしやすさにつながります。まずは、自施設の管理状況を把握することから始めてみるのも一つの方法です。
自施設の入退室管理状況を確認してみませんか?
以下のチェックシートでは、介護・医療現場で起こりやすい入退室管理の課題をセルフチェックできます。
▶ 介護・医療現場向け|入退室管理セルフチェック15項目を見る
次回予告
次回は、「介護・医療現場の入退室管理、なぜ属人化する? よくある運用課題を整理」をテーマに、共有鍵や記録不足がなぜ発生するのか、現場運用の視点から掘り下げます。
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