警備員を取り巻くカスタマーハラスメント(カスハラ)|現場で起きている課題とは
【警備業界向け】現場運営・安全管理
はじめに
商業施設やオフィスビル、イベント会場など、さまざまな場所で人々の安全を支えている警備員。しかしその現場では近年、暴言や威圧的な言動、不当な要求といったカスタマーハラスメント(カスハラ)が課題となっています。
警備員は施設のルールや安全を守る立場であるため、入館制限や駐車場の案内、立入禁止区域への声掛けなど、利用者へお願いや注意を行う場面が少なくありません。
その結果、利用者の不満が向けられ、トラブルへ発展してしまうケースもあります。
こうした状況は、警備員個人の対応力だけで解決できる問題ではありません。

この記事では、警備現場で起こりやすい対人トラブルの背景と、企業として考えておきたい安全配慮の考え方について解説します。
警備現場で増える対人トラブル

警備業務は、人と接することが中心となる仕事です。
施設への入館ルールを説明する、駐車場や搬入口で車両を誘導する、イベント会場で来場者を案内する、立入禁止区域への侵入を防ぐ、混雑時の列整理や誘導を行うなど、相手に行動をお願いしたり、場合によっては制止したりする場面もあります。
そのため、「待ちたくない」「急いでいる」「納得できない」といった感情が警備員へ向けられ、暴言や威圧的な態度につながることがあります。
特に大型イベントや商業施設のセール期間、観光シーズンなど、人の流れが集中する繁忙期には、来場者のストレスも高まりやすく、対人トラブルが発生しやすくなります。警備員は最前線で対応する立場だからこそ、こうしたリスクと隣り合わせで業務を行っています。
なぜ証拠が残りにくいのか
対人トラブルが発生した際、「その場で何が起きたのか」を後から正確に確認できないケースは少なくありません。
警備員は巡回や立哨など、常に移動しながら業務を行うことが多く、固定式の防犯カメラでは現場全体を記録できない場合があります。
また、トラブルが起きても、どのようなやり取りだったのか、どちらが先に声を荒らげたのか、どのような説明を行ったのかを客観的に振り返ることが難しいケースもあります。その結果、当事者同士の記憶や報告に頼らざるを得ず、認識の食い違いへ発展することもあります。
こうした状況は、現場で対応した警備員だけでなく、事実確認を行う管理者にとっても大きな負担となります。

現場担当者の心理的負担

カスタマーハラスメントは、精神的な負担にもつながります。一度強い暴言や威圧的な態度を受けた経験があると、「また同じことが起きるのではないか」「注意したことでトラブルになるかもしれない」という不安を抱えながら業務を行うことも少なくありません。
その結果、本来であれば声を掛けるべき場面でもためらいが生まれ、安全確保や施設運営に影響を及ぼす可能性があります。警備員が安心して業務を行える環境を整えることは、現場で働く方々を守るだけでなく、施設利用者の安全を守ることにもつながります。
企業に求められる安全配慮とは
カスタマーハラスメントへの対応は、現場担当者だけに任せるものではありません。企業には、従業員が安心して業務に取り組める環境を整えることが求められます。カスハラへの対応方針を明確にする、トラブル発生時の報告・相談体制を整備する、管理者による迅速なフォロー体制を構築する、対応方法を共有し教育・訓練を行うといった取り組みは、現場で働く警備員の安心感にもつながります。
また、トラブルが発生してから対応するだけでなく、「トラブルを起こしにくい環境づくり」という視点も重要です。設備や運用を含めた総合的な対策を検討することで、現場の負担軽減や安全性の向上が期待できます。

まとめ
警備員は、多くの人が安心して施設を利用できるよう支える重要な役割を担っています。その一方で、利用者との接点が多いからこそ、カスタマーハラスメントのリスクにも直面しやすい立場でもあります。
こうした課題は、個人の経験や対応力だけで解決できるものではありません。企業として現場を支える体制と仕組みを整え、警備員が安心して業務に取り組める環境づくりを進めることが、現場全体の安全性を高めることにつながります。

次回は、カスタマーハラスメントへの対応を「事後対応」だけで終わらせないために、トラブルを未然に防ぐ「抑止」の考え方と、現場で実践しやすい具体的な対策についてご紹介します。
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