停電・避難時も見守りを続けるために|介護施設で確認したい「防災×防犯」【後編】
【介護福祉業界向け】安全対策

台風や大雨などの災害によって避難や停電が発生すると、介護施設では利用者の居場所や職員配置、設備の利用状況など、平時とは異なる環境で利用者を支えることがあります。
前編では、普段の見守りが職員配置や利用者の生活動線、施設内の出入り、設備、情報共有など、さまざまな「いつもの施設運営」に支えられていることをご紹介しました。
【前編|災害時の介護施設で見守りをどう続ける?】
では、避難や停電によってその前提が変わったとき、利用者の見守りを続けるためには何を確認しておけばよいのでしょうか。
後編では、災害発生前の準備から避難・移動、停電・通信障害、通常運用へ戻すまで、見守りを支える施設運用という視点から確認したいポイントをご紹介します。
災害時の見守りは「平時と同じ方法」を前提にしない
平時の介護施設では、職員の配置や担当、利用者が過ごす場所、施設内の動線などがおおむね決まっています。
職員同士の情報共有や、見守りに関わる設備なども、日常の施設運営のなかで利用されています。
しかし、避難によって利用者が普段とは異なる場所へ移動したり、職員の人数や配置が変わったりすれば、平時の役割分担をそのまま続けられるとは限りません。
停電や通信障害が発生した場合には、普段利用している設備や情報共有の手段にも影響が生じることがあります。非常時の見守りを考える際に必要なのは、平時の方法をそのまま増やすことではありません。
「利用者の居場所が変わったらどう把握するのか」「担当する職員が変わったらどう共有するのか」「設備や通信が通常どおり利用できなかったらどうするのか」など、平時から変わる部分を確認しておくことがポイントです。

災害発生前に確認したい見守り体制
台風や大雨など、事前に影響が予想される災害では、状況が変わってから対応を考えるのではなく、平時のうちに見守りを支える施設運用を確認しておくことが、その後の対応にもつながります。
ここで確認したいのは、災害時の避難方法そのものではありません。
利用者を見守るために普段どのような情報や人員、設備を利用しているのかを振り返り、それらの条件が変わった場合を考えておきます。
利用者ごとの支援・見守りに必要な情報
利用者によって、日常生活で必要となる支援や見守りの内容は異なります。
災害時に利用者の居場所や担当職員が変わった場合でも、支援に必要な情報を確認できる状態になっているかを考えておく必要があります。
重要なのは、ここで新しい情報を増やすことではなく、普段どこにある情報を、誰が、どのように確認しているのかを把握することです。
平時の担当者だけが分かる状態になっていないか、場所や担当が変わった場合にも必要な情報を共有できるかという視点で確認します。
職員が少ない・担当が変わった場合の役割
災害時には、交通機関の運休などによって予定していた職員が出勤できなかったり、避難や施設内の移動に伴って通常とは異なる役割を担ったりすることも考えられます。そのような状況では、「普段この利用者を担当している人」「いつもこのエリアを確認している人」だけを前提にした運用では、役割が曖昧になることがあります。
職員配置が変わった場合、誰がどの利用者やエリアを確認するのか。途中で担当が変わった場合、どのように引き継ぐのか。
平時とは異なる配置になったときにも、担当する人と確認する範囲が分かるようにしておくことが、見守りを続けるための土台になります。
設備・通信が使えない場合の確認方法
施設によっては、電話や通信機器、業務システム、見守りに関わる設備などを利用して情報を確認・共有しています。
こうした設備や通信が利用できることを前提に業務を組み立てている場合、停電や通信障害によって普段の方法が使えなくなると、情報共有の流れも変わります。
そこで確認しておきたいのが、普段どの設備や通信手段に依存しているのか、そしてそれらが通常どおり利用できないときに、どのような方法で状況を確認・共有するのかという点です。
設備ごとの非常時の動作は異なるため、「停電すれば使えない」「非常電源があれば普段どおり使える」と一括りにせず、自施設の設備や運用に沿って確認します。
避難・移動時に確認したいこと
避難や安全確保のために利用者が普段とは異なる場所へ移動すると、平時の生活動線を前提とした見守りも変わります。
このとき大切なのは、移動そのものだけでなく、移動した後も利用者の状況を把握できる状態を保つことです。
利用者がどこにいるかを把握できるか
利用者が居室や共用部など普段過ごしている場所から移動した場合、「いつもの場所にいる」という前提では状況を把握できなくなります。
複数の場所へ分かれて移動したり、途中で移動先が変わったりすることも考えられます。
そのような状況でも、誰がどこにいるのかを職員間で把握できることが、見守りを続けるうえで重要になります。
どのような方法が適しているかは施設の規模や利用者の状況などによって異なりますが、少なくとも「利用者の居場所を誰が把握し、どのように共有するのか」が曖昧にならないようにしておく必要があります。
誰が誰を見守っているかを共有できるか
利用者の居場所とあわせて確認したいのが、担当する職員です。
避難や移動によって職員の配置が変われば、普段とは異なる職員が利用者を担当することもあります。
このとき、「誰かが見ているはず」という状態になると、担当の重複や抜けに気づきにくくなります。
誰がどの利用者を担当しているのか、担当が変わった場合には誰へ引き継いだのかなど、職員同士で認識を共有できる運用が必要です。
普段と異なるエリアの出入りをどう把握するか
利用者の移動に伴って、施設内で普段とは異なるエリアを利用することもあります。
また、災害時には家族や支援者、関係事業者などとの対応によって、人の出入りや動線が平時とは変わることも考えられます。
ここで必要なのは、「災害時だから不審者への警戒を強める」という考え方ではありません。
普段とは異なる場所を利用し、人の動きも変わるなかで、誰がどのエリアへ出入りしているのかを把握できる状態になっているかという施設運用上の確認です。
平時の出入口や入退室のルールが、そのまま利用できるのか。利用する場所が変わった場合に、管理が曖昧になる場所はないか。
利用者の居場所や職員配置とあわせて、人の出入りについても確認します。
停電・通信障害時に確認したい設備と運用
停電や通信障害が発生した場合、見守りに関わる設備や防犯カメラ、電子錠、入退室管理システムなどが、平時と同じ状態で利用できるとは限りません。
一方で、「停電したらすべての設備が停止する」と考えるのも適切ではありません。
非常電源やバックアップ電源の有無、通信への依存、設置環境、機器そのものの仕様などによって、非常時の動作は異なります。
そのため、自施設で利用している設備について、平時のうちに次のような点を確認しておきます。
- 停電時にどの機能が利用できるのか
- 非常電源やバックアップ電源があるのか
- 通信が利用できない場合にどの機能へ影響するのか
- 電子錠などを利用している場合、停電時に施錠・解錠がどのような状態になるのか
- 復電後に操作や動作確認が必要なのか
具体的な動作は、取扱説明書や仕様書、設置事業者などを通じて確認します。
そして設備の状態を把握するだけでなく、通常どおり利用できない機能がある場合に、施設側でどのように状況確認や情報共有を補うのかも整理しておく必要があります。
設備の仕様と施設側の運用をあわせて考えることで、非常時に「何が使えて、何を人や別の方法で補う必要があるのか」を判断しやすくなります。

通常運用へ戻すときにも確認する

停電から復旧したり、避難していた利用者が元の場所へ戻ったりすると、施設では通常の運用へ戻すための対応が始まります。
このとき、「復電した」「利用者が戻った」というだけで、見守り体制も自動的に元へ戻ったと考えないことが大切です。
利用者の居場所や状況は把握できているか。担当する職員や役割分担は通常の体制へ戻っているか。出入口や入退室の状態に問題はないか。設備は正常な状態へ復旧しているか。避難中や停電中の情報・記録で引き継ぐべきことはないか。
こうした点を確認しながら、非常時の運用から平時の施設運営へ戻していきます。
特に設備については、電源や通信が復旧しただけですべての機能が自動的に通常状態へ戻るとは限りません。必要な操作や確認は設備によって異なるため、自施設で利用している機器の仕様に沿った確認が必要です。
災害時の見守りは、避難が終わったところや電気が戻ったところで完了するものではありません。
災害発生前の準備から避難・移動、停電・通信障害、そして通常運用への復帰までを一つの流れとして捉えることが、見守りを支える施設運用の抜けを見つけることにつながります。
設備・仕組みで非常時の見守りを支える
ここまで見てきたように、災害時にも利用者の見守りを続けるためには、利用者の居場所や担当職員を把握することに加え、人の出入りや設備、情報共有など、見守りを支える施設運用を確認する必要があります。
一方で、こうした管理を特定の職員の記憶や経験だけに頼っていると、職員配置や利用する場所が変わったときに、状況を把握しにくくなることもあります。
平時から、施設内のどこを誰が利用するのか、どのように入退室を管理しているのかを整理しておくことも、施設運用を見直す一つの視点です。
エイト・シーズでは、介護施設における入退室管理について、鍵管理や職員交代、管理が必要なエリアなどの観点からご紹介しています。
また、施設の課題や運用によっては、電子錠や入退室管理システムなど、人だけに依存しない管理方法を検討することも選択肢になります。
ただし、設備を導入すること自体が目的ではありません。
誰がどこへ出入りする必要があるのか、どの場所を管理したいのか、現在の運用で何が課題になっているのかを整理したうえで、自施設に合った方法を検討します。
※停電時の動作は製品やシステム、電源構成、設置環境などによって異なります。導入済み・導入を検討している設備について、仕様書や取扱説明書、設置事業者などを通じて確認してください。
まとめ|災害時にも見守りを続けるために

介護施設では、災害時に利用者や職員の安全を確保したうえで、その後も利用者の状況を把握し、必要な支援や見守りを続けていくことになります。
そのためには、非常時だけ特別な対策を追加するのではなく、平時の見守りを支えている施設運用が、避難や停電によってどのように変わるのかを確認しておくことが必要です。
災害発生前には、利用者の見守りに必要な情報や職員の役割、設備・通信について確認する。避難や移動が必要になったときには、利用者の居場所と担当する職員、人の出入りを把握する。停電や通信障害が発生した場合には、設備の仕様と、それを補う施設側の運用を確認する。そして通常運用へ戻す際には、利用者、職員、出入口、設備、記録や引き継ぎの状態を改めて確認する。
こうして平時から通常運用へ戻るまでを一つの流れとして捉えることで、「いつもの施設運営」が変わったときにも、何を確認すべきかを整理しやすくなります。
災害時の見守りを考えることは、災害時だけの特別な仕組みを考えることではありません。
普段、どのような人・場所・設備・情報によって利用者の見守りが支えられているのか。その前提が変わったときにどう対応するのか。
平時の施設運営を振り返りながら備えておくことが、非常時にも利用者の見守りを続けるための土台になります。
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