台風で物流が止まると拠点管理はどう変わる?物流現場で考えたい「防災×防犯」【前編】
【物流業界向け】安全対策

台風や大雨の影響が予想されるとき、物流現場では配送の中止や変更、荷受けの調整など、さまざまな対応が必要になります。
こうした状況では、「荷物を予定どおり運べるか」「いつ配送を再開できるか」といったことに目が向きやすいかもしれません。
しかし、配送が止まったからといって、物流拠点の運営まですべて止まるとは限りません。
拠点内に荷物が残っている、予定されていた入出荷が変更される、通常とは異なる職員配置になる、復旧や再開に向けた作業が発生するなど、物流拠点では平時とは異なる状況への対応が続くことがあります。
では、「いつもの物流」が変わったとき、物流拠点の管理にはどのような変化が生じるのでしょうか。
今回は「防災×防犯」の視点から、台風や配送停止などによって物流拠点の運用が変わるときに考えておきたい、拠点管理の考え方をご紹介します。
台風で「配送が止まる」と物流拠点も止まるとは限らない
台風の接近などによって、安全確保のために配送を中止・変更したり、入荷や出荷の予定を調整したりすることがあります。
物流の流れが変われば、それに伴って物流拠点の運用も変化します。
たとえば、予定していた出荷が延期されれば、本来は出庫するはずだった荷物が拠点内に残ることがあります。入荷や荷受けの予定が変更されれば、保管場所やその後の作業を調整する必要も出てきます。
また、配送が止まっていても、拠点内の確認や残っている荷物への対応、業務再開に向けた準備などのために、職員が作業することも考えられます。
つまり、「トラックが走っていない」「荷物の動きが止まっている」という状態と、「物流拠点の運営がすべて止まっている」という状態は、必ずしも同じではありません。
物流が通常どおり動かないときにも、拠点では荷物や人、設備などを管理する必要があります。
そこで考えておきたいのが、平時とは異なる運用になったときにも、物流拠点の状況を把握できるかということです。

平時の物流拠点は「いつもの流れ」で管理されている
物流拠点では、日々さまざまな荷物と人が動いています。
その運営は、毎回ゼロから組み立てられているわけではありません。入荷から保管、仕分け、出庫までの工程や、そこで働く人の役割、利用する場所や設備など、一定の運用を前提として成り立っています。
入荷・保管・仕分け・出庫の流れが決まっている
物流拠点では、荷物が入荷してから保管され、仕分けや積み込みを経て出庫するまで、それぞれの工程に沿って作業が進められます。
荷物の流れが決まっているからこそ、どの荷物がどこにあり、次にどの作業が必要なのかを把握しやすくなります。
こうした平時の物流工程については、以前の記事でも詳しくご紹介しています。
職員・ドライバー・委託先などの役割が決まっている
物流拠点では、倉庫内で作業する職員だけでなく、ドライバーや委託先のスタッフなど、立場の異なる人が業務に関わります。
誰がどの業務を担当するのか、どの時間帯に拠点を利用するのかといった役割や動きも、日常の運用のなかである程度決まっています。
利用する出入口やエリアが決まっている
荷物を扱う場所、事務所、保管エリア、出入口など、物流拠点では場所ごとに用途が分かれています。
人や荷物が決められた動線に沿って動くことで、誰がどのエリアを利用しているのかも把握しやすくなります。
設備・電源・通信が利用できる
物流拠点の運営は、人だけで成り立っているわけではありません。
照明やシャッター、通信設備、防犯カメラ、電子錠、入退室管理など、さまざまな設備が日常の業務や拠点管理を支えています。
こうした人・荷物・場所・設備が「いつもの状態」で動いていることも、平時の拠点管理を成立させている前提の一つです。
台風や配送停止で「いつもの拠点運営」が変わる
台風や大雨などによって配送や入出荷の予定が変わると、平時の物流拠点を支えている前提にも変化が生じます。
ここで考えたいのは、「台風だから危険が増える」ということではありません。
平時とは荷物の動き、人員配置、作業時間、設備の状態などが変わることで、それまでの管理方法がそのまま当てはまるとは限らなくなるという点です。
入出荷の予定や荷物の滞留状況が変わる
配送の中止や延期、荷受けの変更などが発生すると、予定していた荷物の流れも変わります。
本来は出庫する予定だった荷物が残ったり、入荷予定が変更されたりすれば、通常とは異なる場所や期間で荷物を管理することも考えられます。
平時とは荷物の量や置かれている場所が変わることで、「いつ、どの荷物が、どこにあるのか」という拠点内の状況にも変化が生じます。
職員・ドライバーなど人の配置や出入りが変わる
台風などの影響で出勤できる職員が変わったり、配送予定の変更によってドライバーの出入りが通常とは異なったりすることもあります。
委託先を含め、普段とは異なる人員配置になれば、「いつもの担当者がいる」「いつもの時間にいつもの人が来る」といった前提も変わります。
人の動きが変わるときには、誰が拠点内にいるのか、誰がどの業務やエリアを担当しているのかを把握する方法も、平時と同じでよいとは限りません。
通常とは異なる時間帯に作業が発生することがある
配送や入出荷の予定が変更されれば、それに伴って作業時間がずれることもあります。
予定変更への対応や業務再開の準備などによって、通常とは異なる時間帯に職員や関係者が拠点へ出入りすることも考えられます。
普段とは異なる時間に作業が行われる場合、通常の時間帯を前提とした人員配置や出入口の管理では対応しにくくなることがあります。
停電・通信障害で設備の利用条件が変わる
台風などの影響で停電や通信障害が発生すれば、物流拠点で利用している設備にも影響が及ぶことがあります。
ただし、停電したからといって、すべての設備が同じように停止するわけではありません。
設備の仕様や電源構成、非常電源・バックアップ電源の有無、通信への依存などによって利用できる機能や状態は異なります。
重要なのは、「停電したら使えない」と一括りにすることではなく、設備が通常とは異なる条件になることも、拠点運営が変わる要素の一つとして捉えておくことです。
非常時の物流拠点では「荷物」だけでなく「管理の前提」を見る

物流現場では、荷物を安全に保管し、予定された工程へつなげていくことが求められます。
そのため、台風や配送停止などが発生したときにも、拠点内に残る荷物の状況は大きな関心事になります。
一方で、荷物だけを確認していても、拠点全体の状況を把握できるとは限りません。
誰が拠点内にいるのか。どの荷物が残っているのか。どのエリアや出入口が使われているのか。設備はどのような状態なのか。
こうした要素は、平時であれば日常の業務フローや役割分担のなかで自然に把握できていることもあります。
しかし、配送停止や人員変更、作業時間の変更、停電などによって「いつもの流れ」が変われば、平時の方法だけでは状況を把握しにくくなることがあります。
防犯というと、盗難や不審者への対策を思い浮かべるかもしれません。
物流拠点における「防災×防犯」を考えるうえでは、犯罪への警戒だけに限定せず、非常時にも人・荷物・場所・出入口・設備の状態を把握し、拠点を管理できるかという視点で考えることが必要です。
物流BCPと拠点セキュリティは同じではない
災害時の物流について考える際、「BCP(事業継続計画)」という言葉を目にすることも多いでしょう。
物流におけるBCPでは、災害などが発生した際にも事業を継続・復旧するため、輸送や人員、設備、サプライチェーンなど幅広い視点から備えを考えます。
一方、今回取り上げている物流拠点のセキュリティは、物流BCPそのものを考えるものではありません。
災害対応やBCPに基づいて配送を止める、入出荷を変更する、人員配置を変えるといった判断が行われたとき、その結果として物流拠点の運用も平時とは異なる状態になります。
その際に、人や荷物、出入口、利用エリア、設備などをどのように管理するのか。

事業継続のための判断と、その判断によって変化した物流拠点を管理することは、分けて考える必要があります。
物流BCPを検討する際にも、「物流をどう止めないか」だけでなく、物流が止まる・変わる状況になったときの拠点管理にも目を向けておくことで、非常時の施設運用をより具体的に考えやすくなります。
まとめ|「物流が止まったとき」の拠点運営まで考える

台風や大雨などによって配送や入出荷が止まったり変更されたりしても、物流拠点の運営がすべて止まるとは限りません。
荷物が拠点内に残る、職員の配置が変わる、通常とは異なる時間に作業する、停電や通信障害によって設備の利用条件が変わるなど、「いつもの物流」が変わることで拠点管理の前提も変化します。
平時には、入荷から出庫までの流れ、人員配置、利用する出入口やエリア、設備など、一定の運用のなかで物流拠点が管理されています。
だからこそ非常時には、「平時と何が変わっているのか」という視点から拠点の状態を見ることが必要です。
物流が止まることへの備えと同時に、物流が止まったあと、あるいは通常とは異なる動きになったときにも、物流拠点の管理は続きます。
では、配送停止や入出荷の変更、人員変更、停電・通信障害などが発生した際、物流拠点では具体的に何を確認すればよいのでしょうか。
後編では、荷物や利用エリア、人の出入り、設備、そして業務再開まで、非常時の物流拠点で確認したいポイントを具体的にご紹介します。
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